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有微研フルーツトマト

大村市今富町の《農事組合法人 大村有微研》さん。

こちらでは、出口和幸さんが中心となって“有微研フルーツトマト”を育てています。

トマトが本来持っている力を限界まで引き出し、少しでも美味しい1玉を作り上げようとする情熱。

それは、真っ赤に熟した実とその味わいにあらわれていました。

有微研フルーツトマト

生産ではなく育成。それは1株、1玉との根気強い付き合い。

水をなるべく与えないことで、トマトの細胞密度を高め味を濃くするこの農法に取り組んで、今年で20年ほどになります。そうやって実を凝縮させて糖度を高めていく手法です。そうなると乾燥に強い株とそうでない株が出てくるもので、生育のばらつきはあって当たり前の世界ですね。弱い株の場合、成長点が低いところにとどまってしまいます。隣り合った株でも「こっちは水を切って、逆にそっちは水を増やして」と、しっかりとした温度管理のもと適切に水を与えて茎を高く伸ばして、次の花が咲くように心がけないといけません。そうしないと収量が減って、痛い思いをすることになりますからね。伸びがいい株だけ、あるいはよくない株にだけ目を向けていてはいけないんです。

これから色付いていきます
グリーンベースがしっかり出ています
長く太い産毛

ヘタから実の上のほうに伸びた緑色の帯は“グリーンベース”といい、水が少ない環境で極限までがんばっていることを示すサインです。甘みがあって味の濃い実をつけますよ、とトマトが言ってくれているんですね。

空気中の水分をつかまえようと、茎やヘタには長く太い産毛がびっしり。過酷な状況下で実をつけようと必死なトマトは、このように毛深いのが特徴です。

あえて厳しい環境を用意して、作物はもちろんそれを育てる自分自身のことも追い込むことで、限界を上回る力を引き出そうという手法。このハウスのトマトと出口さんは、まるでアスリートとコーチのような関係なんですね。

むやみに糖度を上げようとしていると、その弊害が絶対に出るものなんです。化学肥料だと糖度の追求は容易ですが、そうやって作り出した8度と有機肥料で引き出した8度とでは、旨味(アミノ酸・グルタミン酸の含有量)が違います。

大切なのは、トマトの持っているものを引き出す過程。日々の苦労があってこそ、甘さに加えて味わいの豊かさが乗ってくるわけです。技術云々ではなく、トマトが持っている力と根気強く向き合えるかどうかですね。

水を“切る”のは、トマトにとって決していいことではありません。でも、力を引き出すために必要な負荷なんです。かわいそうな思いをさせているからこそ、心のなかで毎日「ありがとう」と言っています。

出口和幸さん

人にできるのは、自然の力を引き出すことだけ。

ビニールロープの段
徐々に色付くトマト

「今年は例年になく上手い具合に生育してくれとります。あくまで今のところは、ですけどね。限界以上にがんばろうとしてくれよるけん、こっちも茎を丁寧に追っていかんば」。「追う」とは、茎の先端が伸びるたびに、株に並べて張ったビニールロープのひとつ上の段に留めていく作業を指します。一般的には27段ほどまで伸ばすことを前提に栽培しますが、出口さんのハウスでは「全部で14、15段までいけば……」といったところ。つまり、収量が半分になることを覚悟してまで、1玉の味を追求しているのです。その1玉だけを取ってみれば「どうしてほかのに比べて小さいのに値段が高いの?!」と思うかもしれませんが、収量よりも品質を優先した結果なのです。

たった1回の水やりにも、状況判断と決断が求められる。

水を切ると、水分を蓄えようとすることで、葉が厚くなります。それすらも限界を超えると逆に薄葉になっていき、葉脈がよりくっきり浮き出てきます。この圃場の株をよく見ると、下から中ほどまでの葉は厚くなっている一方で、上にいくほど薄くなっています。それ以上に厚みを出せるほどの余力がないんですね。

水やり1回あたり、0.3度の割合で糖度が下がっていきます。そのあと再び水を切るとまた上がっていき、乾燥の具合を見ながら次に水を与えるタイミングを見極めます。そうやって上がったり下がったりを繰り返すことで、糖度は引き出されていくわけです。生きている相手との付き合いなんだな、とつくづく実感します。

葉脈がくっきり
ビニールハウス内の様子

1本の株から採れる玉数も、日々の管理がものをいいます。とはいえ、収量を増やそうといたずらに数を求めれば、小さい玉ばかりになってしまうのだとか。都合よくコントロールできるような、甘い世界ではありません。

「フルーツトマトていうても、やっぱり適度な大きさというもんがあって、いわゆるミディトマトの大きさしか形にできんやったら、消費者のみなさんに満足してもらえんごとなります。味の追求と大きさとば両立できんことには、この農法に精魂を傾けとる意味もなかですけんね」。
出口さんなりのトマトとの向き合い方が、この言葉に集約されているような気がしました。

出荷前の検査にも全神経を。その細やかさも品質の一部。

収穫したトマトを選果場に運んだら、コンテナをコンベアの上に持ってきます。コンベアにはエリアセンサーが付いていて、あらかじめ目視で選別したものを「この枠内はA品、こちらはB品」をいった具合に配置したなかから、心臓部である糖度センサーがふるいにかけます。糖度8を基準に、8度未満の分、8度以上10度未満の分、10度以上の分と3段階に選り分けていきます。さらにカラーグレーダーが大きさ・形・色・傷で等級を判別し、分けて下に落としてくれます。

通常は抜き取り検査で十分としているところ、私たちは全量検査しています。お買い求めいただくみなさんに”はずれ”を届けるわけにはいきませんから、水準を一定に保つことにも精いっぱい注意を払っています。

出荷前検査
コンベアー
真っ赤に色付きました

りんごのような赤い色と、柿を思わせるパンパンに張った実。この大きさを目指してようやく、糖度8が実現できるのだそうです。さらに10度以上ともなれば「今年はどうなるか皆目見当もつかんですね」という言葉が思わず口を突いて出るほど、出荷するに十分な品質の実がなる割合は、年によってまちまち。「ここまで大きかとは、オイも初めてですよ」と出口さんは言いますが、その表情はけっして喜びんでばかりはいられない、と語っているよう。土づくりにはじまる地道な作業を通してどれだけきちんと1株、1玉と向き合ってきたか。その結果が、文字どおり実になるというわけです。出荷を迎える時期には、みずからを試されているような気分かもしれません。

有微研フルーツトマト

※写真はイメージです

​【有微研フルーツトマト】
長崎県大村市産

トマトの生命力が凝縮したような色づきと輝きは、まぶしいほど鮮やか。ずっしりとした手応えは、みずみずしさと豊かな味わいを物語ります。​ひと口ごとにあふれ出る果汁、噛みしめるほどに感じる旨味。​ぜひ一度お手に取って、ご賞味ください。

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