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貴婦人の微笑み

艷やかで香り高く、甘みも豊かな苺”貴婦人の微笑み”をご存知ですか?

まだ愛媛と長崎でしか生産されていない、これからの人気が期待される品種です。

そんな注目の苺の栽培を手がける雲仙市国見町の《前田武彦さん・哲郎さん》親子。

”美味しい苺”の定義を塗り替えてしまいそうな、赤い淑女たちに会ってきました。

貴婦人の微笑み

「これはいける!」という確信が、親子にあったから。

この”貴婦人の微笑み”をうちのハウスで栽培し始めたのは、いまから3年ほど前になりますね。まだ品種名も付いていないような、それこそ登録番号だけで呼ばれていた時期からの付き合いです。以前からいくつかの品種を試験的に栽培してきたんですが、そうするなかで父親とも話し合ってみて「これはいけるんじゃないか?」ということでふたりの意見が一致したのが、本格的な栽培に着手するきっかけでした。現在は、このハウスの半分ほどが”貴婦人”です。まだまだ赤く色付いていない実もありますが、収穫の最盛期は2月。それまで、苺らしい色がしっかりと乗ってくれるのを待ちます。その頃には、この苺ならではの香りがハウスのなかいっぱいに漂っていますよ。

ビニールハウス内の様子
程よい色付き
果肉は真っ白

この”貴婦人の微笑み”の特徴は、真紅のベールに包まれた柔らかで真っ白な果肉、そして目を見張るほどの甘さ。それらもさることながら、そのかぐわしい香りについてもふれないわけにはいきません。顔を近付けなくても立ち上ってくる芳しさに、きっと「苺って、こんなに香りを放つものなんだ!」と驚くことうけあいです。つやつやした表面から漂う芳香は、その名前がけっして伊達ではないことを感じさせてくれるとともに、いかにも甘そうな味を想像させ、思わず頬ばりたくなってしまいます。鼻に飛び込んできた瞬間、ほかの品種との違いをはっきりと主張し、苺好きならずともうっとりしてしまう、そんな香水をまとったレディーというわけです。

生産農家は、育てた作物に自分で値段を付けて、消費者のみなさんに直接買っていただくことはできません。そのぶんバイヤーさんにはうるさいことも言いますが、作ったものがその値打ちを認めてもらった価格で売れてこそ、先のことを考えた行動が取れるというものです。1パックが10円でも高く売れることで、その年の収益は大きく変わります。新しいことに取り組みたいと考えている農家にとって、これはとても重要なことです。だからこそ「買い取ってもらうだけでもありがたい」と及び腰の姿勢ではダメなんです。いまの農家には、交渉力も大事。品質の高いものを作り続けるためにも「こっちもがんばるから、そっちも頼んだよ!」とプレッシャーをかけるくらいの気概がないとやっていけませんよ。

一粒一粒が大きくずっしり

”いいものを作り続けること”に求められる覚悟。

受粉に欠かせないミツバチ
ハウスに差し込む陽光

広い島原半島でもここ国見は、冬の季節も雪が積もることはめったにないそうで、フルーツのなかでもとりわけデリケートな苺を栽培するには適した土地です。そのため、苺栽培を手がける農家さんも多くいらっしゃいますが、この”貴婦人の微笑み”を育てているのは、前田さんのところともう1軒だけなのだとか。まだまだ珍しい品種のため生産数が限られ、ほかの苺と同じように大手スーパーで見かける機会はありません。それが"nozoe262"で店頭に並ぶのは、生産する側とそれを販売する側との長い付き合いと、それによって培われた信頼関係があってこそのことなのです。それだけに、鮮度も味も折り紙つき。安心してお買い求めいただけます。

苺というのはそもそもデリケートですから、ほかの品種と同じく繊細な扱いを心がけています。若干、病気に弱い傾向が見られるようには感じるものの深みのある緑の葉が厚く、大きくなるのは、この品種ならではですね。実が成長する時期には、色付きを邪魔しないように、覆いかぶさる葉を丁寧にどかしていってあげないといけません。寒さが本格的になる12月からが美味しさも増す時期ですが、温度を見て回るため、夜中にハウスの様子を見て回ることもあります。暖房が欠かせないので、ここ数年の重油価格高騰も正直言って堪えますね。深夜も早朝も、ましてや日曜・祝日も問わず、やるべきことはいくらでもあります。生きている植物を相手にした仕事ですし、人間の都合でものを考えてはいられません。

青々と健康的な葉

デリケートなレディーには、そのぶん細やかな接し方を。

大きさも形も兼ね備えた実

近年では、大きさも甘さも兼ね備えた苺が増えてきましたが、そのなかには扇形に開いたいびつなものもあります。ところがこの貴婦人は、あの逆三角形を保ったまま大きくなるというのですから、苺好きにはうれしい限り。「確かに美味しいけれど、形がきれいならもっといいんだけどなぁ……」なんてことを言わせないのも、淑女のたしなみといったところでしょうか。そして、大ぶりな実を指でつまみ、歯を立てたときに感じる果肉の柔らかさ。ふわっとほぐれていくような食感に続いて、ほんの少しの酸味をお供に引き連れて、糖度13を誇る甘さ(高級みかん並です)が口いっぱいに広がります。一度でも味わった人に鮮烈な印象を残す、そんな苺なのです。

収量増加をはかるため、近年もてはやされている炭酸ガス発生機を導入しています。日の出前の数時間、炭酸ガスを浴びせることによって、収量が増えることに加えて果実が大きくなる効果も得られるのは、ありがたいですね。

苺に限ったことではありませんが、農作物との付き合いに「毎年いっしょのことをするだけ」というのはないんです。暑さ・寒さに波があるのはもちろん、病気や虫も、思いがけず発生しますからね。それでも、こうした目新しい品種に取り組める、チャレンジが許される環境を作ってきたことが、うちの強みです。まだ市場に出回っていないものを育てることは、それ自体が大きな刺激になりますし、事業としての将来性・可能性を広げることにもつながりますから。

前田武彦さん
前田哲郎さん

チャレンジできるから、面白い品種にも出会える。

苺の魅力が詰まった一粒

香り、食感、そして甘み。苺に必要とされる要素を高いレベルで兼ね備え、それらをぎゅっと凝縮したこの貴婦人。さらには、その魅力を堪能できる大きさまであわせ持つのですから、心憎いばかりです。なかには、手の平が隠れそうなほどの大きさまで実るものもあるといいます。その重さ、なんと80g。スーパーなどでよく目にする”とよのか”でさえ、最上級クラスでも50gといいますから、その1.5倍以上にもなります。こちらでは通常、1パック9粒入350gで出荷しているため、同じパックが5粒でいっぱいになる計算です。──食べた人の心がぜいたくな気分で満たされていく──そんな時間を与えてくれる魅惑の1粒。あなたも試してみたいと思いませんか?

貴婦人の微笑み

※写真はイメージです

​【貴婦人の微笑み】
長崎県雲仙市産

”貴婦人”を名乗るにふさわしい、輝きに満ちた赤色、芳しさ、そして味わいの豊かさ。それを存分に楽しませてくれる、まさに才色兼備な淑女がそこにいました。出回ることが少ないからこそ、見かけたら口にしていただきたい一品です。一粒の苺が持つ力に、あらためて気付かされることでしょう。

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